【国際】ケニアにおける脱炭素の取り組みをご紹介

2024/08/06

【国際】ケニアにおける脱炭素の取り組みをご紹介

2024/08/06

日本は2050年のカーボンニュートラル実現という目標に向けて様々な取り組みを推進していますが、世界的な気候問題を解決するためには、脱炭素に前向きに取り組む海外の国と協力することも大切です。
日本から約1万km離れたケニアで今、サステナビリティ向上の動きが急速に広がっています。通貨安や非産油国であることなど、背景にある経済状況には私たちの国との共通点を見出すこともできます。今回は、民間セクターを含め脱炭素の試みが活発化しているケニアの動向をご紹介します。

日本と協力してクレジット発行も

東アフリカに位置するケニアは、人口約5400万人、国土面積は58.3万平方km。日本の1.5倍ほどの広大な国土に、日本の半分くらいの人数が暮らしているイメージです。
公用語はスワヒリ語と英語。コーヒーや紅茶、綿花、トウモロコシなどの農業が主要産業となっています。

東アフリカ最大の港湾を擁し、地域一体の玄関口として経済の中心的役割を担っています。GDP(国内総生産)は約1,130億米ドル、経済成長率は4.8%と高水準です。

日本とは、脱炭素の分野などで協力関係にあります。2021年には、日本との間で二国間クレジット制度(JCM)によるクレジットを初発行。製塩工場における太陽光発電プロジェクトとして、約970tCO2分のクレジット発行が決定し、そのうち日本政府が約490tCO2分を獲得することになっています。

また、2024年2月にはルト大統領が訪日し、サムライ債(円建での債券発行)を含む協力促進の覚書を締結。豊田通商など日本企業と政府があわせて約3,500億円規模の財政支援を決定しました。

脱炭素が広がっている理由

経済成長を続けているケニアで今、電動バイクなどEV市場が広がりつつあります。ケニア国家統計局の統計では、2023年のEV新規登録台数は2,694台。絶対数でみると一見少ないようにみえますが、前年と比べると実に5.7倍と、ガソリン価格高騰や政府の制度的後押しもあって飛躍的な増加傾向にあります。

ケニア道路・運輸省は2024年3月、「eモビリティ政策」の草案を公表しました。そこでは、EVの現地生産、充電設備を含めたインフラ整備、財政支援、消費者向けの普及啓発活動などが掲げられています。

国をあげて脱炭素の取り組みに注力している背景には、ケニアの特有の経済状況があります。ケニアは非産油国であり、他国から石油を輸入するコストが経済成長の重しとなってきました。EVの導入自体にも一定のコストがかかるものの、高騰するガソリンを購入しつづけることに比べると全体として費用を抑えやすいため、EVへの注目度が高まっています。

また、ケニアには「ボダボダ」と呼ばれる独特のバイクタクシー文化があります。バイクタクシーの運転手の多くは、バイクを所有するのではなく、リース事業者から借りた車体でビジネスを行います。

ナイロビの通りを歩いていると、バイクを貸し出すリース事業者の店舗を見つけることができます。そこでは、まるで携帯電話を契約するように、簡単な手続きでバイクを借りることができます。
リース事業者が取り扱うバイクについても最近、ガソリンからEVへの移行が目立っています。ボダボダの運転手がEVバイクを借り、それが街の人々の交通手段となるため、市街地の幅広い層にとって脱炭素の取り組みが身近な存在になっています。

「納得感」が推進力に

ケニアでは、政府によるeモビリティ政策だけでなく、エンドユーザや事業者が経済的なメリットを実感していることが、脱炭素の取り組みの広がりにつながっています。そこで暮らし、働く方たちの「納得感」こそが、サステナビリティの強力な推進力にもなります。通貨安、インフレ、燃料費の高騰など、ケニアの経済状況には日本との共通点もあり、ケニアにおける脱炭素の「自然体」な広がりは、日本にとっても参考になる点が多いと考えます。

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