
AI・データセンターの電力・水、企業が確認すべきこと
2026/08/22AI・データセンターの電力・水、企業が確認すべきこと
2026/08/22
AIの1問あたりの消費エネルギーは、いま急速に下がっています。国際エネルギー機関(IEA)は2026年4月の報告書で、AIの1タスクあたりのエネルギー使用量が近年、年に1桁ずつ下がってきたと述べています。エネルギーの歴史で前例のない速さの改善である、という評価です。簡単なテキスト生成であれば、同じ時間テレビをつけているより消費電力は小さいとされています。
それでも、データセンター全体の電力消費は2025年に17%増えました。AIに特化したデータセンターに限れば、同じ年に50%増えています。
効率が上がっているのに総量が増えているのは、使われ方が変わったためです。動画生成や推論、エージェント的なタスクは、1回あたり簡単なテキスト生成の数百倍から数千倍のエネルギーを消費するとされています。1回あたりの消費が下がっても、使われる回数が増え、しかも1回で処理する内容そのものが動画生成や推論のように桁違いに大きくなれば、合計は減りません。効率化は、総量の増加を打ち消す力にはなっていない、というのがIEAの現状認識です。
■増えているのは量だけではない
IEAは、データセンターの電力消費が2025年の485TWhから2030年に950TWh程度へとおよそ倍増し、世界の電力需要の約3%を占めるようになると見ています。AI特化型に限れば、この間に3倍になるとしています。
ただし、事業会社にとって効いてくるのは総量よりも密度と場所です。
AIサーバーの電力密度は2020年から2025年にかけて11倍になり、2027年までにさらに4倍になる見通しとされています。IEAの表現では、2027年には冷蔵庫ほどの大きさのサーバーラック1本が、65世帯分に相当する電力(同時に電気を使っている量)を求めるようになります。同じラックから排出される熱は、ガスボイラー30台分に相当するとされています。
電力は「どれだけ使うか」だけでなく、「どこで、どの瞬間に、どれだけ集中して使うか」の問題になっています。
■日本でも需要は減少から増加に転じた
資源エネルギー庁は2026年5月、この20年ほどの日本の電力需要は省エネや人口減少により減少していたものの、データセンターや半導体工場の新増設などにより増加が見込まれる、と説明しています。
電力広域的運営推進機関(OCCTO)が2026年1月に公表した需要想定でも、2026年度の全国の最大需要電力は159,626千kWとされ、前年度実績から811千kW(0.5%)増加すると見込まれています。増加の要因として、経済成長とあわせてデータセンター・半導体工場の新増設が明示されています。同想定は、2035年度にかけて増加が続くとしています。
そして制約は、全国の合計値ではなく特定の場所に現れます。資源エネルギー庁の資料は、データセンターについて、千葉県印西・白井エリア等の一部地域に供給可能量を超える申込みが集中し、系統接続に時間がかかって事業者の計画と合わないケースが発生している、と記述しています。
地域間連系線については、今後10年間程度で1,000万kW以上という、過去10年間の約120万kWの8倍以上の規模の整備が目指されています。裏を返せば、その整備が終わるまでは制約が続くということでもあります。
■系統につながらないときに起きること
系統に接続できない場合、電力はどこかから調達されます。
IEAは、米国では系統接続の遅さに制約された事業者が、敷地内での天然ガス発電を伴う計画を進めていると報告しています。2030年までに15〜27GW程度がこの形でまかなわれる可能性があるとされています。変動の大きいデータセンターの負荷に対して敷地内発電で信頼性を確保するには、需要に対して30〜70%多い設備を持つ必要があるという分析も示されています。2025年にはガスタービンの受注が70%増加しました。
系統制約は「電気が足りない」という形だけでなく、「燃料に置き換わる」という形でも現れます。日本でこの動きがそのまま再現されるとは限りませんが、電力の制約が燃料の消費に転化しうるという構造は共通しています。
■測る制度があるところと、ないところ
日本では2026年4月から、省エネ・非化石転換法に基づくデータセンター向けの措置が施行されました。ベンチマーク制度として2030年度までにPUE(施設全体の消費エネルギーをIT機器の消費エネルギーで割った値)を1.4以下とする目標が設定され、2029年度以降に新設するデータセンターには1.3以下という基準が課されます。基準を満たせない場合は合理化計画の提出が求められ、従わない場合は更なる行政措置の可能性があるとされています。
あわせて、2026年度の提出分から定期報告書にデータセンターに関する項目が加わり、2025年度以降に新設したデータセンターについては、年度末までに自社サイト等での公表も求められます。IT機器を持ち込む側のテナント型データセンターも、新たに算定の対象になりました。
一方、EUでは2024年の委任規則により、IT電力需要が500kW以上のデータセンターに対して、PUEに加えてWUE(水使用効率)と総水消費量・飲用水消費量の報告が義務づけられています。
つまり、同じような設備であっても、立地する地域によって「測って報告することが求められる項目」が異なります。日本の現行制度が求めているのは主にエネルギー効率であり、水の使用について同等の報告義務は確認できません。測られていないことは、使われていないことを意味しません。
■実務上、着手していくポイント
多くの事業会社は、自社でデータセンターを持たず、クラウドやAIサービスを使う側にいます。この場合、電力・水・燃料への依存は、委託先を経由して間接的に抱え込まれることになります。
実務上、AI活用の拡大を検討する際に最初に確認すべきは、自社の排出量への影響ではなく、委託先のデータセンターがどの地域の電力と水に依存しているかであると考えられます。
企業が開示する排出量の算定から、この情報は出てきません。電力の排出係数は電気事業者ごとの年間平均値として与えられるため、どの地域の系統が、どの時間帯に逼迫しているかは、使用電力量との掛け算の結果には残りません。制約は特定の場所・特定の時間帯に生じますが、開示される排出量はそれを平準化した後の数字です。立地に関する情報は、契約前であれば確認できることが多い一方、稼働後に動かすことは容易ではありません。順序として、契約の前に置くべき確認事項であると考えられます。
AIの利用が広がる速さと、それを支える電力系統や設備が更新される速さは、同じではありません。IEAは、この乖離が電力・系統接続・製造能力・資本の各所でボトルネックとして現れていると指摘し、地域社会が計画に反対する動きが増えていることにも触れています。
日本では、データセンター事業者に対して効率の公表を求める制度が動き始めました。使う側の企業がその情報をどう読むかは、これから決まっていきます。測られている項目だけを見るのか、測られていない項目についても問うのか。依存の所在を把握する作業は、そこから始まると考えられます。
■参考文献
IEA「Key Questions on Energy and AI」(2026年4月)
https://www.iea.org/reports/key-questions-on-energy-and-ai/executive-summary
電力広域的運営推進機関「全国及び供給区域ごとの需要想定(2026年度)」(2026年1月)
https://www.occto.or.jp/assets/news/juyousoutei/260121_juyousoutei_r1.pdf
資源エネルギー庁「GX実現に向けた系統整備のあり方について」(2025年10月)
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/gx_jikkou_kaigi/sangyoritchi_wg/dai5/shiryo2.pdf
資源エネルギー庁「増加が見込まれるデータセンターの電力需要をどうする?さらなる省エネを進める新たな制度に注目!」(2026年5月)
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/data_center2026.html
資源エネルギー庁「省エネ・非化石転換法に基づくデータセンター業に係る措置のガイドライン」(2026年4月)
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/enterprise/factory/support-tools/data/dc_guideline.pdf
European Commission, Commission Delegated Regulation (EU) 2024/1364(2024年3月)
https://eur-lex.europa.eu/eli/reg_del/2024/1364/oj/eng
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